<明治乳業不当労働行為事件>
高裁判決(市川工場事件)の認定・判断は、
典型的な不当労働行為・差別事件を裏付ける内容
都労委で、調査期日が重ねられている「全国事件」に、重要な影響が考えられる「市川工場事件」高裁判決から2ヶ月余が経過しました。控訴人らは、「控訴棄却」の不当判決として、当然ながら最高裁に上告して闘いますが、同時に、判決が事件の核心に踏み込んで明らかにした、事実認定と判断の積極的内容を、都労委「全国事件」の審理・判断に反映させる事が大切だと考えています。判決は、明治乳業が1960年代後半から長期に行ってきた不当労働行為の全体像を、集団間比較で明確に認定、判断したのです。今回は、「格差」の認定、判断について見ます。
「号給格差」を、無視できない「有意な格差」と認定
特に、集団間「格差」の存在は決定的判断要件です。地裁判決は、「有意な格差は認められない」と事実を誤認し、「不当労働行為の要件である不利益取り扱いの事実が認められないということになり、原告らの主張はその余の点を判断するまでもなく理由がないということになる」と、不当労働行為を否定し棄却したのです。
高裁民事5部は、職分・号給格差について、「当審における新たな争点」との訴訟指揮を行い、求釈明と4証人審理を行いました。判決は、この審理を踏まえ、職分格差の実態を、職分号給(各1〜7号)に踏み込んで判断。「申立人らとその他の者とを集団的に比較した場合、号給の点においては、無視できない差異が存在しているものと認められる。これは、各年度においては、職分においては目立たなかった格差が、昇格時期の違いを反映して、号給の差となって現れたものと推認される」とし、「・・・昭和59、60年度に受ける号給において、他の従業員と比べ有意な格差があったというべきである」と、明確に認定、判断をしているのです。
「除斥期間の趣旨に反する」だけでは許されない!
しかし、判決は、「過去に行われた不利益取り扱いの累積された格差は、労働委員会の裁量によって行えるもの・・」としながらも、「除斥期間の趣旨に反する」と救済を放棄したのです。しかし、「格差」は、定年後も年金格差等に継続する現実問題です。明確になった企業犯罪を「古い事だから・・」と免罪では、この種事件の救済は有り得ません。まさに、労働委員会や司法の「あり方」が問われるのであり、都労委には、高裁判決の事実認定を踏まえた審理と判断が求められます。
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