東京争議団
都庁前共同宣伝行動
(2007年6月19日)

 朝から真夏の日差し、梅雨はどこヘやら。東京争議団定例の都庁前共同宣伝行動は明治乳業争議団、中野区保育争議団、私教連・鶴川高校教組と元都労委労働者委員・戸塚章介氏の4者共同ビラの配布と訴えを行いました。
 この日の行動には私教連・松蔭学園教組、元凸版争議団、変額保険被害者の会、国金発展会、公共一般労組の支援をいただきました。
 参加団体は7団体22名。1000枚のビラを配布しました。


支援の国金発展会福地さん


企業寄りの姿勢が目立つ都労委命令
不当労働行為制度をもう一度噛みしめてもらいたい

 06年中交付された31件27本の命令の中で、3分の1を超える11件10本の棄却命令について、前回に引き続いて問題点を指摘したいと思います。 
 「エクソンモービル」(平成8年不15号)事件は申立から11年も経って棄却されました。この事件は、?業績評価を基本とする賃金配分に関する説明を求める組合に対して「賃金配分は会社の専権事項」だとして団交での説明を拒否したことが不誠実団交になるか、?会社が賃金交渉の未妥結を理由に、組合が一時金については会社提案通り妥結すると言っているのに一時金支払いを拒否したことが支配介入に当たるかどうか、が争点でした。
 都労委はいずれも「不当労働行為とまでは言えない」として棄却したのです。
 組合が、賃金の額だけでなく、その配分にもこだわるのは当然のことです。業績評価という名分で査定部分を拡大することを表明している会社に、その理由の説明を求めることは、あまりにも当たり前の交渉態度と言えるでしょう。都労委は会社が「本件団交以前に可能な限り説明を行っていた」として、団交で説明しなくても妥当であると判断しています。しかし、団交以外での説明は会社が一方的に行ったもので、組合の反論権行使は団交の席上でやるしかありません。それを「賃金配分は会社の専権事項」だとして拒否するのは明らかに不誠実団交です。
 また一時金支給を、賃金交渉が妥結しないことを理由に断ることは、賃金交渉で会社の意図通りに妥結させるための不当な条件提示であります。組合が一時金は会社提案通り呑むと言っているのだから、当然支給しなければなりません。それをしないのは、一時金不支給という経済的打撃を与えて、組合の運動方針を変えさせようという支配介入にあたります。
 なお「エクソンモービル」事件は、平成13年にも、ほぼ前記事件と同趣旨で申し立てられましたが、都労委は、ほぼ同趣旨の棄却命令を出しています。
 「東京都生涯学習文化財団」(平成16年19号)も、団体交渉のあり方が問題になった事件です。組合が、臨時職員の雇用、労働条件についての団体交渉を申し入れたところ、財団は以前財団から協議を申し入れたときに組合が応じなかったことを理由として、組合申し入れの団交を拒否し、一方的な説明会開催を強行しました。
 そもそも団交権は組合の権利として憲法、労組法で保障されているものです。ですから普通、団体交渉の申し入れは組合から行うもので、使用者が申し入れるのは、使用者に都合のいい何かの事情があるものです。都労委はその根本のところを見逃して、使用者を免罪してしまいました。
 いずれも、企業寄りの姿勢が目立つ都労委命令です。

(元都労委労働者委員  戸塚 章介)

<明治乳業不当労働行為事件>

高裁判決(市川工場事件)の認定・判断は、
典型的な不当労働行為・差別事件を裏付ける内容

 都労委で、調査期日が重ねられている「全国事件」に、重要な影響が考えられる「市川工場事件」高裁判決から2ヶ月余が経過しました。控訴人らは、「控訴棄却」の不当判決として、当然ながら最高裁に上告して闘いますが、同時に、判決が事件の核心に踏み込んで明らかにした、事実認定と判断の積極的内容を、都労委「全国事件」の審理・判断に反映させる事が大切だと考えています。判決は、明治乳業が1960年代後半から長期に行ってきた不当労働行為の全体像を、集団間比較で明確に認定、判断したのです。今回は、「格差」の認定、判断について見ます。

「号給格差」を、無視できない「有意な格差」と認定

 特に、集団間「格差」の存在は決定的判断要件です。地裁判決は、「有意な格差は認められない」と事実を誤認し、「不当労働行為の要件である不利益取り扱いの事実が認められないということになり、原告らの主張はその余の点を判断するまでもなく理由がないということになる」と、不当労働行為を否定し棄却したのです。
 高裁民事5部は、職分・号給格差について、「当審における新たな争点」との訴訟指揮を行い、求釈明と4証人審理を行いました。判決は、この審理を踏まえ、職分格差の実態を、職分号給(各1〜7号)に踏み込んで判断。「申立人らとその他の者とを集団的に比較した場合、号給の点においては、無視できない差異が存在しているものと認められる。これは、各年度においては、職分においては目立たなかった格差が、昇格時期の違いを反映して、号給の差となって現れたものと推認される」とし、「・・・昭和59、60年度に受ける号給において、他の従業員と比べ有意な格差があったというべきである」と、明確に認定、判断をしているのです。

「除斥期間の趣旨に反する」だけでは許されない!

 しかし、判決は、「過去に行われた不利益取り扱いの累積された格差は、労働委員会の裁量によって行えるもの・・」としながらも、「除斥期間の趣旨に反する」と救済を放棄したのです。しかし、「格差」は、定年後も年金格差等に継続する現実問題です。明確になった企業犯罪を「古い事だから・・」と免罪では、この種事件の救済は有り得ません。まさに、労働委員会や司法の「あり方」が問われるのであり、都労委には、高裁判決の事実認定を踏まえた審理と判断が求められます。

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